【薬局実習】実は、市販薬になったPPI!医療用との違いは説明できる?効果や特徴を徹底比較

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2025年はPPI市場大革命の年


2025年6~8月にかけて、胃酸抑制効果のある医療用同成分のPPIが3種類発売しました。
今まで、受診をしないと手元に置くことがなかったPPIが、調剤薬局やドラックストアで購入することができるようになったのです。

昨今、医療保険の見直しが大きく議論されているなかの1つに
「OTC類似薬の保険適用の見直し」
があります(2025年11月分時点)が、その先駆けとなったのがPPIでしょう。

今後、風邪薬や湿布を保険適用から外し、市販薬で治療をしていこうという流れが強まった場合、
薬剤師にとって、同効薬の比較をしっかり理解し、患者さんに説明できる必要があります。

今回はPPIの違いを理解し、学んでいきましょう。

PPIとは?


Proton Pump Inhibitor(プロトンポンプ阻害薬)の略でPPI。
これは薬学生であればご存じの方も多いかと思います。

では、作用機序は?
こちらはPPIのなかで1番歴史の深い「オメプラゾール(成分名)」の添付文書を参考にして見たいと思います。
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胃腺の壁細胞の細胞膜上に存在する受容体へ、各種酸分泌刺激物質が結合することにより、壁細胞内において一 連の胃酸分泌反応がおきる。
この反応の最終過程では、 壁細胞内からH+を放出し、代わりにK+を取り込むプロトンポンプと呼ばれる酵素H+ ,K+ -ATPaseが働いている。
このプロトンポンプの働きを阻害することによって、胃酸分泌を抑制する。
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要は、壁細胞にあるポンプを阻害して、胃酸の分泌を抑制する、という働きですね。

医療用医薬品ではPPIは4種類ですが、P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブッロカー)の1種類も含め、
計5種類と広域的にPPIとまとめる先生もいらっしゃいます。

①ラベプラゾール(商品名:パリエット)
②ランソプラゾール(商品名:タケプロン)
③オメプラゾール(商品名:オメプラール)

④エソメプラゾール(商品名:ネキシウム)
⑤ボノプラザン(商品名:タケキャブ/これがP-CAB)

この中で市販薬として発売されたのは①〜③になります。

3種類の比較


市販薬になったPPIの比較を表にまとめました。

今回は大きく4つに分けて詳細を見ていきたいと思います。

1)名称・製剤に関する項目


いずれも「要指導医薬品」の分類です。
文字通り販売する時に『指導を要する医薬品』となっています。

特徴としては以下のものが挙げられます。
・リスク度が高い
・薬剤師が対面で説明・販売しなければならない
・ネット販売では買えない
・販売記録と2年間の保存が義務
・購入者の手が届くところに陳列してはいけない

商品名は医療用医薬品と同じ商品名の語尾に「S」が付いています。
異なる商品名だとわかりにくいので、この点は薬剤師としても患者さんとしてもわかりやすく設定していますね。

せっかくなので商品名の由来も、インタビューフォームから見てみましょう。

・パリエット→本剤の標的細胞である壁細胞の英名「Parietal Cell」の一部から命名した
・タケプロン→タケダのプロポンプインヒビター
・オメプラール→一般名(Omeprazole)より

含量に関しては、医療用医薬品と同含量ですが、医療用医薬品は倍量の規格も存在しています。
医療用と市販薬で最大用量は異なりますので、販売時にはその点もしっかりと説明して販売する必要があります。
製剤販売元に関しては、パリエットのみ同じエーザイとなっています。

2)治療に関する項目

効能効果・使用年齢・用法用量・使用期間限度、これらは3商品とも共通しています。

○効能効果
胃痛・胸やけ・もたれ
となっています。
いずれも商品パッケージには【胃酸逆流】というワードが入っていますが、
効能効果に逆流性食道炎という直接的なワード入っていないので要注意です。

○使用年齢・用法用量
いずれも15歳からです。
用法は1日1回で、同じ時間帯に服用すること、となってます。
用量は、医療用では倍量服用することはありますが、市販薬では認められてませんのでこちらも注意をしましょう。

○ 使用期間限度
3日間飲んで改善があれば最大14日は服用可能。(他のPPIも含めて)
改善がなければ、商品説明書を持って受診することを促しています。

これが次項に説明する「包装錠数」と繋がっています。

3)値段・剤形・期限に関する項目

これらは商品別にみていきたいと思います。

①パリエットS
包装錠数が最も少ないですが、1錠あたりの金額が割高です。
6錠・12錠という包装錠数も気になります。
2週間までは使えますが『3日間使用しても良くならない場合は服用を中止』と記載されてるので、
受診目安3日間の【2回分・4回分】という狙いかと推察します。

剤形が「腸溶錠」のため「かんだり、砕いたりせず服用してください。」という注意書きがあります。
期限は、これのみ「開封後6か月」となっています。

②タケプロンS
こちらは口腔内崩壊錠のため、
・錠剤をうまく飲み込めない人
・水分摂取を制限されている人
には適したお薬です。
ただ、口腔内で吸収されるわけではないので、口腔内で溶かしたあとは唾液や水で飲み込む必要があります。

③オメプラールS
タケプロンSと同じ包装錠数になりますが、こちらが安価で、患者さんにしては購入しやすい1つの基準になるかもしれません。
こちらも剤形が「腸溶錠」のため「かんだり、砕いたりせず服用してください。」という注意書きがあります。

パリエットもオメプラールも14錠包装なので、使用して胃の不調が改善した場合は、1箱までは飲み切ってよいと判断できますね。

4)安全性に関する項目

3剤とも共通している併用禁忌薬がありますね。

・リルピビリン
・他の胃腸薬
の2剤です。

リルピビリンは抗HIV薬の1つになりますが、併用することによりリルピビリンの効果が減弱してしまうので併用しないことになっています。
PPIによって、胃内のpHが上昇しリルピビリンの吸収が低下してしまうためです。

タケプロンSの併用禁忌は、他の薬に比べて多いですが、そのうちの2つ(アタザナビル・テオフィリンを含む乗物酔い薬)は既に販売自体は終了しています。
販売は終了していますが、自宅に残っている該当薬があった場合に、一緒に服用しないよう注意喚起をしているようです。

下記の2剤は以下の理由で併用禁忌です。
・テオフィリン→テオフィリンの血中濃度が下がることが考えられるため
・酸化マグネシウム→緩下作用が減弱することが考えられるため

「添加剤」と「相談すること」は繋がってくるのですが、添加物としてアスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物)が含まれているため、
フェニルケトン尿症である患者さんには、服用前に医師や薬剤師に相談
するよう促しています。

※フェニルケトン尿症・・・フェニルアラニンをチロシンに変える酵素の働き弱く、フェニルアラニンがや体内に蓄積しチロシンが少なくなる病気

うまくアスパルテームを分解できず蓄積してしまうので、異なるPPIを推奨しましょう。

ガスター・ファモチジンとの違い

胃酸抑制薬といえば、PPIH2ブロッカーが2大巨頭かと思います。

今まで第1類医薬品の市販薬で発売されていたメジャーな胃薬といえば、H2ブロッカーの「ガスター」や「ファモチジン」です。
H2ブロッカーは、胃酸分泌を刺激する「ヒスタミン」をブロックして、胃酸分泌を一時的に抑える、という働きで効果を示します。

一般的にPPIより効果が優しいと言われていますが、即効性が期待できます。
「今すぐこの症状を改善させたい!」という患者さんには、PPIではなくH2ブロッカーを推奨することもいいかと思います。

ただし、15~80歳までの年齢制限があるので、その点はPPIと大きく異なる点です。

さいごに


今回はPPIの3種類についてまとめましたが、今後ほかのPPIの発売可能性もあります。
市販薬と医療用で同成分だとしても、使用法や用量が異なってきますし、同効薬であるH2ブロッカーとの違いも理解することが大切です。
患者さんの状況に応じた使い分けもしっかり理解できるようにしましょう。

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