【薬局実習】殺虫剤が調剤薬局にある”ワケ”とは?地域を支える魔法の「48薬効群」と「リスク区分」

目次

はじめに

薬局実習に行くと、処方箋なしで購入することができる市販薬が置いてある薬局が多数かと思います。

市販薬を見渡すと、

「ベンザブロックがあるな」
「アリナミンもある」
「リンデロンもある」
「・・・リアップもあるんだ」
「・・・・・・ゴキジェットまである!?」

と、如何にも薬局に置いてそうな市販薬、
逆に置いてなくてもよさそうな市販薬や商品を目にする人がいるのではないでしょうか。

しかし、市販薬を置いている多くの薬局は、ある理由を持っていることがあります。
実習前や実習中この記事を読んで、どんな理由が隠されているか学んでから実習に挑みましょう。

市販薬の薬効区分

大きく18種類に分類に分かれています。
18分類は、さらに細かい薬効で分けられています。
薬局に置いてある市販薬は、以下の48の薬効に当てはまることが多いです。


以上の48薬効です。
とても細かく分類されていますね。

薬局に置いてある市販薬がこの薬効に当てはまることが多い理由として、
「ある加算」を取るために、薬局に備蓄しておくことが条件となっている48薬効群だからです。

「ある加算」とは

「ある加算」とは、「地域支援体制加算」のことです。

逆から捉えると、これらのお薬が一式そろっている薬局は「地域支援体制加算」を取っている可能性があります。

これらを揃えておけば加算が絶対取れるわけではありませんが、
加算が取れないのに、わざわざ48薬効の市販薬を揃えているところは少ないかと思います。

なので「市販薬が多いな~」と思った場合は、加算を取っている1つの指標になっていると思ってよいでしょう。



「地域支援体制加算」とは

文字通り、
「地域住民の皆様を支援できる体制が整っている薬局」
に加算できる制度です。

「自分たちの薬局は、地域のために働いているぞ!!!」

と自己判断でできるわけではなく、
厚生労働省が加算を取るために設けている基準の中に「48 薬効群の品目を取り扱うこと」が入っています。

48薬効群を常備している薬局は、
「地域住民の皆様の健康をサポート、ある程度軽度な身体の不調は自分自身でフォローできるような場所」
として自治体が認めている形になります。

「48薬効群揃える=地域支援をしている=加算も取れる=売り上げにつながる」という流れになるので、
この市販薬を置くことが、売り上げを伸ばすための魔法のようですね。

どのくらい売り上げに繋がる?

地域支援体制加算は、1~4の区分があります。
・地域支援体制加算1→32点
・地域支援体制加算2→40点
・地域支援体制加算3→10点
・地域支援体制加算4→32点

この加算は処方箋1枚あたりに付与される点数です。
1点=10円になりますので、例えば月の処方箋枚数が1500枚で、地域支援体制加算1の要件を満たしている薬局があるとします。

単純計算となりますが年間で、
1500枚/月×12か月×32点×10円/点=5,760,000円
の売り上げが出ることになります。

年間で500万以上の売り上げになると、薬剤師1人の年収にも繋がりますね。

加算を取るためには、48薬効群揃える他に厳しい要件がありますが、
年間でこのような大きい数字が出るのであれば、やりがいも感じそうですね。

薬効の調べ方

薬局に置いてある市販薬は48薬効群のどれに当てはまるのでしょうか。

独立行政法人医薬品医療機器総合機構の
「一般用医薬品・要指導医薬品の添付文書検索」
で調べることができます。

冒頭で記載した内容は、

「ベンザブロックがあるな」→1)かぜ薬(内用)
「アリナミンもある」→24)ビタミン剤
「リンデロンもある」→33)鎮痛・鎮痒・収れん・消炎薬(パップ剤を含む)
「・・・リアップもあるんだ」36)毛髪用薬(発毛、養毛、ふけ、かゆみ止め用薬等)
「・・・・・・ゴキジェットまである!?」→48)殺虫薬

の薬効に当てはまることになります。

殺虫剤や育毛剤も、地域住人の身体的な健康や精神的な健康、公衆衛生を守るため置いてあるということですね。

薬効ではなく安全性での4区分

薬効以外にも、安全性によってもリスク区分することができます。

安全性で分類されるのが、
・要指導医薬品
・第1類医薬品
・第2類医薬品
・第3類医薬品

の4つです。

リスク度や販売方法など異なってくるので、下の表にまとめました。

この表で「要指導医薬品」や「第1類医薬品」が厳しく規制していることがわかります。
「要指導医薬品」や「第1類医薬品」が実習先にあった場合、これらの市販薬が患者さんの手が届くところに置いてないか確認してみてください。

第2類医薬品は、さらに「指定第2類医薬品」に枝分かれしており、よりリスクが高いものが設定されています。
「2」を〇や□で囲っているのですが、主に風邪薬や一部の鎮痛剤などが、この分類に指定されています。

薬効とリスク区分を調べてみましょう

薬効では「48)殺虫薬」に分類された「ゴキジェット」を見てみましょう。
先ほど記載した独立行政法人医薬品医療機器総合機構の
「一般用医薬品・要指導医薬品の添付文書検索」
を参考に調べてみたいと思います。

①販売名(医薬品の名称)に調べたいキーワードを入れる。

②当てはまる商品の「HTML」を選択する。
 こちらには「薬効分類」と「リスク区分」と記載されているのでわかりやすいかと思います。

③「薬効分類」と「リスク区分」が確認できる。

これにより、この商品は「第2類医薬品」ということがわかります。


購入者の手が届くところに配置ができ、購入記録などは不要ということがわかりますね。

地域住人に役立った事例

毎月、定期薬をお渡ししている患者さん(50代・女性)が、今月も来てくださいました。

この日も定期薬の処方せんを預けてくださり、その準備をしているときに市販薬の陳列棚を眺めていました。
お声掛けをしたところ、
「再来週、船に乗ってお出かけをするけど、酔い止めは買えるかしら?」
と相談がありました。

一旦病院に戻ってもらい、主治医に相談して酔い止めを処方してもらう方法もありますが、
少しお急ぎな様子もあったため、市販薬での対応をし、今回は、
トラベルミン ファミリー
を推奨しました。

48薬効群の
5)鎮うん薬(乗物酔防止薬,つわり用薬を含む)
に分類されるものです。

定期処方との併用は問題なかったのですが、お手帳を見たところ2週間ほど前から風邪をひいて耳鼻科を受診しており、
「完全に風邪が治ったわけではない。また受診するかも。」と仰っていました。

トラベルミンファミリーと、風邪薬等は併用ができないので、
・旅行時に酔い止めを使う場合は、耳鼻科の薬を止める
もしくは
・酔い止めは使わずに、風邪の治療を優先する
ことを注意喚起し、販売しました。

来月も薬局を利用してくださった場合は、経過確認をし副作用等もでなかったかチェックが必要です。

地域住人以外にも役立った事例

市販薬は地域住民だけでなく、万人に販売できるものになります。

地方から東京に出張中のサラリーマン(30代・男性)がご来局されました。

「動悸がする」という相談を受け、薬局に備蓄していた
救心
を推奨しました。

48薬効群の
17)強心薬(センソ含有製剤等)
に分類されるものです。

「動悸」と聞くと、受診をしたほうが良さそう・・・と考えもありますが、

・出張中のため土地感覚もなく、かかりつけ医もいない
・普段から動悸がするわけではない
・せっかくの東京出張だったため、仕事が終わっていないのに、趣味である野球観戦を優先してしまい、プレッシャーで動悸がし始めた
というバックグラウンドもあったため、受診は必要ないと判断しました。

救心を購入され安心した様子も感じ取れましたが、出張中のお客さんだったため、現実的にはその後の経過確認が難しいです。

市販薬を常備していると、出張中の方や海外からの旅行者などとの、一期一会も生まれてきます。

おわりに

何気なく置いていると思っていた市販薬には、地域の皆様を思った薬局の温かさも込められています。

市販薬を販売する機会は比較的少なく、販売時に少し戸惑うこともあるかもしれません。
しかし、48薬効を理解ししっかりと把握しておけば、患者さんに対してスムーズに対応することができます。

空の分類表を載せているので、実習先が48薬効群の備蓄していたら、画像保存して印刷して書き込んで学んでみましょう。
是非、実習期間を有効的なものにしてくださいね。

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