インフルエンザにまつわる知識とタミフルの用量に潜む“ワナ”
はじめに

毎年冬になると猛威を振るうインフルエンザ。
2025年は例年より流行が早く、今後いつまで流行が続くか気になるところです。
今後、皆さんが薬剤師になった場合、100%近い確率でインフルエンザのお薬をお渡しすると思います。
毎年、インフルエンザウイルスの型は変わりますが、治療薬は変わりません。
今回はインフルエンザにまつわる知識を深めていきましょう。
今年の変異株

変異株「サブクレードK」が猛威を振るっています。
日本だけでなく世界中で感染が確認されています。
昨年のデータを見ると、1医療機関あたりの平均人数は12月に入ると徐々に増え始め、ピークは12月末でした。(60人超)
しかし、今年は10月から徐々に増え始め、11月中旬時点で50人を超えています。
昨年よりも1か月半ほど早いペースです。
変異株とはいえ、基本的な治療や予防は同じであるため、
・ワクチンを打つ
・手洗いうがい
・こまめな消毒
・マスク
・密集したところには集まらない
などの対策が必要になってきます。
ワクチン

インフルエンザワクチンの予防接種は、毎年10月に始まるところが多いです。
ワクチンといえば注射のイメージですが、2024年には
鼻タイプのワクチン(2歳~19歳未満のみ)
が発売されました。
インフルエンザHAワクチン(注射)

接種して効果を発揮するのに2週間ほど時間を要し、約5カ月間効果が持続すると言われています。
生後6か月から接種可能です。
13歳未満の場合は、2回ワクチンを打つこととなっています。
13歳以上は
「1回またはおよそ1~4週間の間隔をおいて2回注射する」
と記載してありますが、
1回だけのほうが多いです。
こちらは不活化ワクチンのため、他のワクチンと間隔をあける必要はなく接種できます。
しかし、小児においては敢えて接種期間を設ける先生もいるようです。
実例

3月に生まれたお子さんが、その年の10月にBCGワクチン(注射生ワクチン)とB型肝炎ワクチン(不活化ワクチン)を打った際、
「インフルエンザワクチンは1カ月以上あけて接種してください」
と指示を受けたそうです。
先ほどもお伝えしたように、インフルエンザワクチンは不活化ワクチンのため、実際は間隔をあける必要はありません。
※注射生ワクチンを接種したあとに、注射生ワクチンを打つときのみ27日間の間隔をあけなければいけません。
しかし、ワクチン接種部位の腫れや、発熱など体調に変化が起きた場合に、どのワクチンが原因か特定しにくいこともあるため、敢えて接種期間をずらし、見極めているのではないかと推察されます。
経鼻弱毒性インフルエンザワクチン
フルミスト点鼻液

こちらは生ワクチンです。
年齢制限のあるワクチンで、
各鼻腔に1噴霧ずつするだけです。
注射のような痛みもなく、2回接種することもないので、非常に身体的・精神的負担はないかと思います。
今年で2シーズン目なので、実際に使用した人は注射より少ないですが、
今後はもっと需要が増えてくるのではないかと思われます。
ライ症候群

第104回薬剤師国家試験(問194)に
10歳の子がインフルエンザのなったので、解熱させるためにNSAIDsを直ちに使用する。
という選択肢があります。
これは「誤」になります。
インフルエンザを発症した小児の解熱にNSAIDsを用いるとライ症候群を起こすことがあるため
です。
NSAIDsは使用せず、カロナール(一般名;アセトアミノフェン)を使うことが多いです。
※ライ症候群▶ウイルス感染症に対しをNSAIDs用いることより誘発される急性脳症
実例
鼻水が出てきついと訴える10代前半のお子さんがお母さまと一緒に来局されました。

PL顆粒が処方されてましたが、預かったお薬手帳を拝見したところ、
2日前に別の小児科でイナビル
をもらっていました。
つまり、お子さんはインフルエンザの症状のひとつとして、鼻水の症状がきついということで受診していたのです。

かかりつけの小児科が休みのため、鼻水の薬をもらいにきた、とのことでした。
今回の処方医に、インフルエンザということは伝えていたとのことでしたが、PL顆粒の電子添文には
2歳以上15歳未満の幼児、小児
(水痘、インフルエンザの患者)
投与しないことを原則とするが、やむを得ず投与する場合には、慎重に投与し、投与後の患者の状態を十分に観察すること。
サリチル酸系製剤の使用実態は我が国と異なるものの、米国においてサリチル酸系製剤とライ症候群との関連性を示す疫学調査報告がある。
と記載されています。
原則禁忌のため疑義照会をし、PLの代わりに小青竜湯が処方されることとなりました。
PLには
・サリチルアミド
・アセトアミノフェン
・無水カフェイン
・プロメタジンメチレンジサリチル酸塩
が含まれていますが、
サリチルアミドが原因でライ症候群を引き起こす可能性があります。
インフルエンザ脳症

インフルエンザに患ったことがきっかけに発症する急性脳症のことです。
意識障害を中心として、ひきつけや痙攣などを起こすことがあります。
インフルエンザ脳症のうちの1つが、ライ症候群と考えてよいです。
治療薬
内服薬と吸入薬と点滴があります。
点滴は、入院中の患者さんで、尚且つ内服や吸入が難しい方に使用するイメージがあります。
調剤薬局では内服薬か吸入薬をお渡しすることになりますが、
どの薬を出すかは、処方医の好みに分かれる印象です。

吸入薬を出していた先生が、コロナをきっかけに内服薬に変えた例もありました。
基本は吸入薬を処方しますが、小さいお子さんやご高齢が吸入ができないなら、内服に切り替える先生もいます。

ここで大事なのは、どのお薬が出ても正しく指導ができるかどうかです。
こちらが正しく説明したつもりでも、
「鼻から吸うんですか?」
「イナビルが朝と夜に分けて吸うんですか?」
など質問してくる人もいます。
ただでさえ体調が悪い時に説明を聞くので、
簡潔にわかりやすく説明できる術を身につける必要があります。
年齢によって用量が変わるタミフル
インフルエンザにかかった兄弟が薬局に来ました。
2人ともタミフル(一般名:オセルタミビル)が処方されています。
お兄ちゃん(2才1カ月・15kg)
タミフルDS3% 2.0g
分2 朝夕食後 5日分
弟くん(10カ月・11kg)
タミフルDS3% 2.2g
分2 朝夕食後 5日分
2つの処方を見て違和感を感じた人はいますか?
弟くんのほうが、年齢も体重も少ないのに、1日量が多いです。

「先生が間違って逆にしてしまったんだ!疑義照会しなければ!」
と思ってしまいそうですね。
しかし、これは間違いではないのです。
タミフルは、1才という年齢を境に用量が異なります。
幼小児の場合(1才以上);2㎎/kg/回
新生児、乳児の場合(1才未満);3㎎/kg/回
つまり、1歳未満の方が1回用量が大きいので、
必然的に10カ月・11kgの弟君の方が1日量が多くなることがあります。

タミフルのインタビューフォームの
10.特定の背景を有する患者
4)1 歳未満のインフルエンザ患児を含む薬物動態
を要約すると以下のような内容になります。
タミフルとその活性代謝物の集団薬物動態解析を行い、
0~1 歳までの各日齢に対して
・2.0mg/kg
・2.5mg/kg
・3.0mg/kg
・3.5mg/kg
を投与してAUCを調査した。
その結果、
・1~2歳に30mg/body
・3~5 歳に45mg/body
・成人に75 mg
を投与した際に効果を示すAUCに満たす用量が3mg/kgだったため、
1歳未満の小児における用量を 3.0mg/kg と設定することが妥当である。
新生児、乳児と大人では分布容積が異なるためこのような差が出る、という話もありますが、そこまで詳細にインタビューフォームには記載されてませんでした。

インフルエンザは家族内感染も多いです。
同じ空間で過ごすと、このような兄弟での同時処方も珍しくありません。
お渡しする際は、その旨を一言保護者の方にお声掛けすると、安心されるでしょう。
吸入加算の可能性

最近開かれた中医協総会では、
インフルエンザ等の急性疾患に対する吸入指導を吸入管理指導加算の算定対象に含める案
が出ました。
いままでは、喘息等に用いられる吸入薬のみ吸入管理指導加算が適応されていました。
調剤薬局で対応が異なってきますが、
インフルエンザ吸入治療薬が処方されたときに、
薬局内で吸入してもらうところもあります。
先生からの指示であったり、薬局の善意で吸入してもらいますが、特に加算はないです。

薬局内で吸入指導をすると、
時間が割かれること
感染リスクも高まること
が現実としてあります。
喘息等で吸入管理指導加算を取った場合は、
その結果を処方医にフィードバックする必要があります。
インフルエンザでもこのフィードバックが必要になるかはわかりませんが、正直現実的ではないかとも思われます。
しかし加算が付くことにより、
薬局側の心理的負担も軽減される可能性もあるので、個人的には是非加算が付いてほしいと思っています。
(吸入管理指導加算▶30点(2025年12月時点))
さいごに

大切なイベントなどがあるときにインフルエンザになるのは本当に辛いですよね。
特に皆さんは薬剤師国家試験の直前や試験当日にに感染してしまうと、
今までの努力が100%発揮できなかったり、受験自体ができないこともあります。
「あの時、あの場所に行かなければ感染しなかったのに…」
「換気をしっかりしていれば…」
などと、後悔しないよう日ごろから感染対策がとても重要になります。
ご自身で対策をしっかりして、万全な体調を保ちながら日々過ごしていきましょう。
