薬剤師国家試験で避けるべき「禁忌肢」とは?予想問題と失敗しない為にできること大公開!
薬剤師国家試験での禁忌肢の扱い

皆さんは禁忌肢をご存知でしょうか?薬剤師国家試験では、選択問題で数問選ぶとどれだけ点数が高くても不合格になる選択肢のことです。
医療の現場では、患者の生死に関わる判断を下す場合に間違った選択をしてはいけないため、薬剤師国家試験で採用されています。
禁忌肢は何問選んではいけないのでしょうか?
薬剤師国家試験の合格基準では以下のように定められています。例えば110回薬剤師国家試験では以下の通りとなっています
・全問題の得点が426点以上
・必須問題について、全問題への配点の70%以上でかつ、構成する各科目の得点がそれぞれの配点の30%以上
・禁忌肢問題選択数は2問以下
禁忌肢とはどのような問題が該当するのか?
禁忌肢は、どのような問題か具体的には公開されていません。ただし、どのような問題が該当するのかその指針は示されています。その指針は以下のとおりです。
①公衆衛生に甚大な被害を及ぼすような内容
②倫理的に誤った内容
③患者に対して重大な障害を与える危険性のある内容
④法律に抵触する内容等
⑤誤った知識を持った受験者を識別するという観点から作問することとする。
ただし、偶発的な要素で不合格とならないよう出題数や問題の質に配慮する必要がある。
偶発的な要素で不合格にならないようにするために、明らかな間違いであるように配慮されているようです。実際、勘違い禁忌肢を選んでしまうリスクは低いのではないかと考えられます。
禁忌肢ってどんな問題が該当するの?
禁忌肢は具体的にどのような問題か、厚生労働省から発表はされていませんので、あくまで予想になりますが、今まで厚生労働省が発表しているデータからこのような問題ではないか?と予想することはできるので、実際に見ていきましょう!
第110回薬剤師国家試験(問218)
36歳男性。昨日一食事会があり中華料理とアルコールを摂取した。昨日から胸やけと胃の痛みがあり、まだ治まらなかったので、一般用医薬品の購入を希望し来局した。薬剤師は以下の成分を含む医薬品を提案した。男性はこの薬の成分、副作用や飲み方などについての詳しい説明を求めた。
<提案した一般用医薬品に含まれる成分>
ピレンゼピン塩酸塩水和物
メタケイ酸アルミ酸マグネシウム
炭酸水素ナトリウム
ビオヂアスターゼ2000
問218(実務)
薬剤師の販売時の説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.ピレンゼピンは、胃酸を中和することで効果を発揮する成分です。
2.メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、ピレンゼピンで起こる便秘を防止するために配合されています。
3.本剤には食物の消化を促進する成分が含まれています。
4.本剤の服用により、目のかすみ、異常なまぶしさなどの症状が現れることがあります。
5.2週間服用しても症状が治まらない場合は、さらに服用を継続してください。
上記問題ですが、OTCで2週間も症状が治まらない場合は医師への受診勧奨をしないといけません。にも関わらず、服用を継続させようとするのは禁忌肢に該当する恐れがあるかと思います。
今回の内容では、薬剤師国家試験制度改善検討部会の指針に当てはめると、③患者に対して重大な障害を与える危険性のある内容 に該当します。考えられ、比較的容易に選択肢を選べるのではないでしょうか?
勘違いで選択させないように明らかな誤りであることが考えられます。
第110回薬剤師国家試験(問78)
問78 世界医師会総会にて採択された、ヒポクラテスの誓いを現代化したものであるジュネーブ宣言の根幹となるのはどれか。1つ選べ。
1.患者の権利
2.生命倫理の4原則
3.医師の遵守すべき倫理
4.非人道的な人体実験の実施条件
5.人を対象とした医学研究の倫理的原則
上記問題ですが、人体実験はそもそも禁止されているので、世界医師会総会で採択されることはありません。
今回の内容では、薬剤師国家試験制度改善検討部会の指針に当てはめると、②倫理的に誤った内容や④法律に抵触する内容等に該当します。
第110回薬剤師国家試験(問236)
50歳男性。慢性腎臓病ステージ3b。脳梗塞急性期で経口摂取できず、3日間末梢静脈栄養を投与していたが、栄養不足が懸念されることから、主治医より完全静脈栄養(Total Parenteral Nutrition:TPN)の処方設計について薬剤師に相談があり、協働して実施することになった。
問236(実務)
処方を設計する際に、検討すべきこととして適切なのはどれか。2つ選べ。
1.腎機能への影響を考慮し、分岐鎖アミノ酸(BCAA)を投与する。
2.低リン血症のリスクがあるため、リン酸二カリウム製剤を投与する。
3.代謝性アルカローシスのリスクがあるため、生理食塩液や塩化カリウム製剤を投与する。
4.低カルシウム血症のリスクがあるため、活性型ビタミンD3製剤を投与する。
5.腎不全が進行した場合、カリウム製剤を積極的に投与する。
上記問題では、CKDの患者ですので、カリウム排泄は遅延していることが考えられます。カリウム排泄ができない状況でカリウム製剤を投与してしまうと心停止してしまうリスクがあるので、処方監査で必ず疑義照会しないといけない内容になると考えられます。
今回の内容では、薬剤師国家試験制度改善検討部会の指針に当てはめると、③患者に対して重大な障害を与える危険性のある内容 に該当します。
予想問題ですが、実際に問題を見てみてはどうでしょうか?比較的簡単に回避できそうな問題が多いかなと思います。
不用意に不安になりすぎなくても大丈夫です。
禁忌肢はどれぐらい合否に影響するの?
禁忌肢が、合否に影響するのか、気になる人もいるでしょう。
今まで沢山ご相談を受けていますが、禁忌肢で不合格になった方とお会いしたことは無いので、影響はかなり軽微だと思われます。
実際他の講師や学生に「禁忌肢落ちになった方はいますか?」と聞いても禁忌肢選択で落ちたという人は聞いたことがないです。
もちろん、14,000人程度受験する試験ですので100%禁忌肢落ちが無いかといえば嘘になりますが、限りなくその可能性は低いと考えていただいて大丈夫です。
国試を受験で失敗しないために
禁忌肢を選択しないためにできる対策はいくつかあります。
選択肢はよく見て問題をとき進める

予想問題を見てもわかるかと思いますが、読めば禁忌肢を排除できる問題が多いです。厚生労働省の検討会でも、「偶発的な要素で不合格とならないよう出題数や問題の質に配慮する必要がある。」となっているため、必ず時間が足りなくても、闇雲に選択肢を選んでしまうのは避けましょう。
もちろん選択問題なので、全て埋めて回答することは大切ですが、禁忌肢を選ばないために最後の5-10分は選択肢を吟味する時間を取りましょう!
患者に重大な影響を与えるものを知っておく
死亡や重大な障害が残る可能性がある事象を知っておくことは重要です。
特に見ておいていただきたいのは、ブルーレターとイエローレターです。緊急安全性情報や安全性速報とも言われますが、実際の医療現場で死亡事故や重大な事故が起こったものを医療従事者に伝えるものになります。
これらを題材にした問題は、これら単体で出題されることもありますので、禁忌肢を選択しないためだけでなく、薬剤師国家試験で得点を稼ぐためにも必ず学習を進めておきましょう!
まとめ
いかがだったでしょうか?禁忌肢はどんな問題なんだろうと気になってしまうかと思いますが、禁忌肢だけにとらわれることなく、患者さんに重大な障害を残さないためにも、普段の学習から医療事故を防げるような知識を身に着けておきましょう!